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紅葉は植物にとってどんな意味があるのか?


 
 
紅葉の仕組みは解明されていても、その植物にとっての意義はよく分からないともいわれることがある。
しかし、もしメカニズムの理解がほぼ正しくて部分的な誤りがなければ、その目的は仮にでも明らかになるのではないかと思う。
植物の生き残りの為の知恵は、緻密な合理性をともなって発現するのであり、無駄の入る隙はないからである。
 
 
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まず、落葉樹がなぜ落葉するのかについて。
 
葉は光合成でエネルギーを生み出して枝や幹に送る。しかし同時に、呼吸もするのでエネルギーの消費もすることになる。

秋になり気温が下がると、あまり光合成をできなくなる。
すると生み出すエネルギーより、消費するエネルギーの方がだんだん多くなってしまう。
そこでエネルギーを節約するために落葉する。
 
 
Photo_2
 
 
 
また気温が下がって土壌が凍結すると、根から水を吸収できなくなる。
しかし、葉は蒸散によって水分を放出する。
結果として、植物全体が乾燥してしまう。
そこで乾燥を防ぐために、落葉する。いわばリストラと同じ状態だ。
 
落葉の準備が始まると、枝と葉の間に「離層」が形成される。これは葉が落ちる前に葉柄に生じる特殊な細胞層のことで、葉が落ちた後に茎を保護するコルク組織である。
この離層が形成されると、栄養物質の移動が妨げられるようになる。
  
 
Photo_3
 
 
 
次に、なぜ紅葉するのかについて。
 
これは、葉から主に窒素等の栄養成分を回収するためである。
窒素は緑色の葉緑体・クロロフィルに含まれている。
そこで落葉する前にクロロフィルを分解し、窒素を回収・再利用する。
この時、離層があっても体内を移動しやすくするために、窒素とタンパク質はアミノ酸に分解され、またデンプンはブドウ糖に変えられる。
そして貴重なミネラル類(リン、カリウムなど)の多くはイオンの形で、まだ機能が残っている維管束を通して茎、根などへ運ばれ貯蔵される。
 
クロロフィルは分解されるが、アントシアニン(赤い色素)やカロテノイド(黄色い色素)は窒素が含まれないので残る。
緑色がなくなることで、赤色や黄色が目立って見えてくるわけである。
 
 
Photo_4
 
 
 
紅葉し始めた落葉樹の葉は、クロロフィルの回収を始めるとともに光合成ができなくなる。
その理由は、アントシアニンが赤くなるのは主に日光の当たる側の表面であり、
葉肉細胞の日照を和らげる遮光色素としての働きももっている。
この色素により葉肉細胞を擬似的な日陰状態にして、光合成の効率を下げている。
 
こうして光合成ができなくなった葉緑体(クロロフィル)は分解がさらに促進される。 
従って、きれいな紅葉を見せる樹木ほど資源回収が十分に行われ、落葉する事になるのである。
ちなみに黄色は赤色に準じた遮光効果がある。
 
 
Photo_5
 
  
 
それでは、春と夏にはアントシアニンの赤い色素の合成が起こらないのに、なぜ秋にだけ赤くなるのかという疑問が出てくるかもしれない。
 
それは、葉と茎の間の物質の移動が妨げられることがスイッチになっているからだ。
事故などで枝や葉が折れたり切れたりつぶれたところで物質の移動が妨げられると、その先の方ではアントシアニンが作られる仕組みになっていて、秋でなくても紅葉のように赤くなる。
秋の落葉の準備の時に形成される離層は、これと同じ働きをするので赤く色づくのである。
 
 
Photo_6
  
 
 
また、落葉樹の中には、紅葉するものと、緑のまま落葉するものとに分けられる。
この違いを店の食品販売戦略に喩えてみよう。
 
紅葉する葉は、赤みが増すにつれて光合成ができなくなっていく。
これはスーパーで賞味期限切れが近くなった食品が安売りされるのに似ている。
一個当たりの利益は少なくなるが販売数を伸ばすことで費用(窒素)をより多く回収できる。
 
一方で、紅葉しない葉は落葉する直前まで光合成ができる。
これは窒素回収エネルギーよりも余分のエネルギーを得る戦略を採用しているのである。
コンビニで賞味期限切れが近くなってもギリギリまで値引きせずに売り、その後は廃棄するのと同じだ。
売上げ数は伸びなくても、それを24時間営業でカバーする。 
 
 
Photo_7
 

秋に、急で強い冷え込みがなかった年には、葉がそれほど鮮やかに色づかないことがある。
これは、急いで落葉の準備をする必要がないので、紅葉のメカニズムが緩やかに進行する為である。  
 
結論としては、紅葉は、葉のエネルギーを効率よく回収しながら落葉の準備を促進するための戦略ということになる。
 
 
 
 
 

 
 
 

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自然」カテゴリの記事

コメント

理由は、彼等が命を繋ぐために、その方が「都合が良い」からですよね。
その大前提に則って仕組みを説明できれば良いと思います。
個人的に、説明の意味が分からないところもありますが、それはこちらの責任なので、
仮説の説明に従い、確認してゆきます。

紅葉して落葉するグループと、常緑で落葉するグループがあるのが面白いですね。

iwamotoさん、こんばんは。
置かれた環境に最適化するための進化の過程で、
赤や黄色が必然的に現れたという解釈をしています。
日本のような気候環境では他の選択肢はなかったのかもしれません。
紅葉するしないのグループがあるのは、生物多様性の理解に役立ちますね。
大きな環境の変化でも全滅しないためでしょう。

こんばんは
紅葉についていろいろ難しい理由があるのでしょう
紅葉は季節を感じ、人間の目を楽しませてくれます

yutaさん、おはようございます。
春の新緑での再生に望みを託しながら、
燃え尽きるかのように赤く染まる束の間の姿を
人は美しいと感じるのかもしれません。

おはようございます^^
紅葉 わたしなりですが、、、だいぶ 勉強になりました 感謝
それにしても 見事な色づきの写真が並んでますね
これって Lucianさんの地元(ご近所?)の
ものでしょうか?
とくに 上から3枚めは 印象派モネ的で
亀三郎の好みです、、、ん、、、モネ的じゃない (^_^;)(^_^;)

PS 竜神峡のハナニガナですが
   花期が ハナニガナは7月までくらい?
   撮影日が10月27日なので
   ジシバリって可能性はないですかね。
   ま ジシバリの写真をみても
   ちょっと違うような気がするので
   やっぱり ハナニガナか、、、とも思うのですが 笑
   

亀三郎さん、こんにちは。
写真は、自宅から20キロ圏内で出遭ったものです。
隣町くらいまでの範囲です。
ピンポイントなら色づきのいいものがあるので、
写真を撮るには何とかなりました。
 
PS ハナニガナもジジバリも春から夏に咲く花ですよね。
   可能性として最も近いのが、というか確定できるのが、
   オオジジバリです。秋にも咲いていたという報告数が一番多いです。
   葉の形はオオジジバリです。

こんばんは。
私は論理的なものは頭っから受け付けられない性分なのですが、
ちゃんと最後まで読ませていただきました。
おわかりでしょうが・・・はい、ちゃんとは理解できませんでした。
が、生き延びるためにリストラして省エネして頑張っていることはよくわかりました。
ちょっとの無駄も無く、ちゃんと理屈に則って進行していることに驚きを覚えます。
植物の世界には、人間界のような能天気の後先考えない輩はいないのでしょうね。
この違いは・・・はてさてどうしてなのでしょう。

紅葉の写真がお見事です。
こちらと同じく、スポット的な紅葉のようですね。

esikoさん、こんばんは。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
一言でいうと、要はリストラであり、季節従業員の一時解雇みたいなものです。
昔の北海道の建設業では、冬の間は雪で仕事にならないので休んでいたそうです。

それと、紅葉も落葉もしない常緑樹は、ビジネスに例えると家族経営みたいなものだと思います。
利益は少ないが損失も少ないので、リストラしなくて済むわけです。
 
今年はスポット的な紅葉でした。
ニュースで紹介されるような所に行ってもパッとしないので写欲が湧かなかったです。
近場で見た方がずっと良かったです。

あらら、こりゃこりゃ綺麗な紅葉写真ですねぇ。
今年はどこも紅葉が難しくて苦労されている中、一枚目などは素晴らしいデス。

こんな事は言いたくないが・・・
今年見た紅葉写真の一番手かも
岩手の紅葉が良いのか、Lさんの腕が良いのか
順番つけるのはどうかと思いつつも、
「うーん、一番かも」
でもこれからまだまだ素晴らしい物が出てくるかも知れんし・・・
暫定一位ということにしときましょう(笑)

紅葉のしくみを食品販売戦略になぞらえて書いてらっしゃったのはとても面白かったです。
このような引き出しを沢山お持ちなのはうらやましいですねぇ。
晩御飯の時にこんな話しをしたりするのですか?
そうならば、是非L家の晩御飯に呼んで下さい。


paoままさん、こんばんは。
こちらは山が早く終わって今は平地のほうが紅葉がきれいです。
ただし、今年はピンポイントが多いです。
褒めてもらえるとは思っていなかったので恐縮です。
 
赤や黄色は、閉店整理中の色だったのです。
光合成に使っていた赤を反射して捨てる。
赤で遮光して光合成ができないようにする。
 
企業が現役バリバリの人を突然解雇できないので、
窓際に追いやって仕事をさせずに自発的退職に誘導するみたいな感があります。
組織を守るための仕組みとはいえ、厳しいですね。

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